DX (デジタルトランスフォーメーション)が加速し、企業には積極的にリスキリングに取り組むことが求められます。
経済産業省は、リスキリングを次のように定義しています。
『新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること』
業務がデジタル化すれば仕事は変化し、社員の働き方や会社が求める知識や技能も変化します。そのため、会社が技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶこと=リスキリングが重要になります。
ここでは会社の経理部門においてのリスキリングについて解説します。
経理部門のデジタル化
これまで、経理部門で必要なスキルは、簿記の知識と会計ソフトへ入力するためのパソコン操作でした。紙媒体での管理も多く、他部門と比較するとデジタル化が遅れている傾向にあります。
しかし、近い将来、経理部門のほとんどの業務はデジタル化され、複雑なシステムを使いこなせる社員の育成が必要となってきます。
仕訳はパターンを登録して自動処理、AIに取引パターンを学習させて新規取引にも対応できるため、必ずしも簿記の知識がなくても難なく仕訳ができます。
また、税法などは常に最新にアップデートし、決算書類も自動で作成できるようになります。
経理部門がデジタル化を進めるためには、リスキングに取り組むか、デジタル対応ができる人材を採用していく必要があります。
リスキリングのメリット
業務効率化
社員のスキルを再開発し、業務プロセスそのものを変革することで業務効率化を図れます。また、スキル向上によって人材の再配置が可能になり、社員は適材適所でコア業務に集中しやすくなります。その結果、生産性の向上も期待できます。
経理部門では、クラウド型の経理システムを導入するなど、手入力や紙媒体を極力減らし、複雑な経理システムに対応できる人材を育成しましょう。
業務効率化によって時間ができれば、人件費の削減やワークライフバランスの向上、新規事業の立ち上げが可能になるなど、会社・社員ともにさまざまな恩恵を受けられるでしょう。
人材不足の予防
デジタル化に対応できる人材を求める企業が増えれば、転職市場でのデジタル人材の価値はどんどん高まり、今後さらにデジタル人材の新規採用は困難になるでしょう。
新たに採用するデジタル人材が経理がわかるとは限りませんので、経理ができる人がデジタル人材になることにより経理部門のデジタル化が推進できます。
今のうちからリスキリングを推進し、既存の人材にデジタルスキルを獲得してもらえれば、将来的な人材不足を避けられるかもしれません。
採用コストの削減
デジタル人材など、時代に求められるスキルを持った人材を採用するには、莫大なコストがかかります。
しかし、既存の社員に、会社に必要なデジタルスキルを身に着けてもらえれば、採用コストはかかりません。教育費用と異動の手続きだけで、欲しいスキルと人材を獲得できます。
人的ミスの減少
経理部門は専門知識が必要なため、属人化してしまうケースが散見されます。属人化してしまうと、経理担当者が退職した場合、蓄積された知識やスキルが失われてしまい、大きな損失につながる可能性があります。経理担当者以外が経理に必要な知識を習得すれば、属人化を防ぐことができます。
また、デジタルスキルを活用することにより、電子帳簿保存法やインボイスなど法改正に対応したシステムを導入したり、手入力を極限まで減らすことにより、人的ミスを大きく軽減できます。
リスキリングのデメリット
負担が大きい
経理部門のリスキリングはただ研修などを行えばいいものではありません。会社が必要とする人材やスキルを定義し、それに向けた適切な教育を行う必要があります。
また、リスキリングは就業時間内に行うことが推奨されるため、通常の業務時間が圧迫されることが考えられます。リスキリングによって、残業時間が増えてしまうのは本末転倒です。導入するために、業務の効率化をあらかじめ検討するなど、バランスをとる必要があります。
費用面でも、外部の専門家に依頼する必要があれば、当然費用がかかります。必要とする人材、スキルをどのように習得させるかについてしっかり検討しておかないと費用負担は大きくなってしまいます。
社員のモチベーションの維持
スムーズにリスキリングを導入するには、それができるだけの環境づくりも必要です。
現時点で社員が日常の経理業務で手一杯になっていないか、どうすればリスキリングに取り組む余裕が生まれるのかを考え、状況によっては経理部門のアウトソーシングの活用も検討しなければなりません。
また、リスキリングに取り組んでいる間は適切に評価されていないと感じて、モチベーションが下がってしまうこともあります。リスキリングに取り組んだことやリスキリングにより得たスキルによる成果がきちんと評価できる体制作りも必要です。
会社はリスキリングを推進する目的を社員にしっかり説明し、社員がそれをきちんと理解することがとても重要です。
まとめ
デジタル化に対応できる人材育成により、電子帳簿保存法などの法改正への対応や人材不足など経理部門における課題を多く解決できるはずです。
しかし、気を付けたいのが、新しいスキルを身に着けるリスキリングには、社員にとって負荷となり、多少のストレスがあるということです。強制的に学ばせるだけではスキルを習得する前に、モチベーションが下がってしまいます。まずは取り組める環境を整えたうえで、本人の取り組みたいという意思を尊重しましょう。
リスキリングについては助成金や補助金もあります。人材開発助成金では助成金対象になる研修等もありますので、まずは該当する研修か確認するとよいでしょう。
クラウド型の経理システムを導入し、自動仕訳や経費精算をするところから始めるとデジタル化に取り掛かりやすいため、まだクラウド型経理システムを導入されていない方はぜひご検討ください。
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