災害はいつどこで起きてもおかしくありません。その万が一に備えるのが防災備蓄です。
勤務中に災害が起こったとき、帰宅困難者を社内で待機させたり、道路状況が悪く車移動もままならない場合など、防災備蓄があれば、従業員を施設内で待機させ、保護することができます。社内にいる従業員を安全に守ることは、事業の継続性を高めます。
ここでは、具体的な対策や対策しないことのリスクについて紹介しますので、会社にあった対策をしていきましょう。
防災備蓄の法的義務
労働契約法第5条では、企業が従業員の安全配慮することが義務付けられています。同様に、労働安全衛生法第3条第1項では、企業が労災を防ぐ最低基準を確保するだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、従業員の安全と健康を確保しなければならないと定めています。
ただし、具体的な防災対策が明確に規定されているわけではないため、具体的な対策は、各企業の状況に応じて実施する必要があります。
防災備蓄が必要な理由
災害や停電、断水などが起こったとき、従業員や働く場所を保持し、事業の継続や早期の復旧が必要となります。防災備蓄は、BCPの一つとして重要な備えです。
BCPとは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
BCPを準備しておくことにより、顧客の信用を維持し、市場関係者から高い評価を受けることができ、株主にとって企業価値が向上することに繋がります。
災害時に有効な手を打つことができなければ、中小企業は経営基盤が脆弱なため、廃業に追い込まれるおそれがあります。また、事業を縮小し従業員を解雇しなければならない状況も考えられます。
防災備蓄しない場合のリスク
企業は従業員の安全配慮することが義務付けられています。防災対策をしないことにより、災害時に従業員が被害を受けた場合は、安全配慮義務違反として損害賠償請求される可能性があります。
通常業務中に起こりえるケガや病気だけでなく、自然災害でも安全配慮義務を負います。なにも対策しなければ、安全配慮義務違反を問われてもおかしくはありません。
安全配慮義務違反には具体的なペナルティはありませんが、損害賠償に発展するリスクはあります。
災害が起こる前に確認しておくポイント
長期間必要な水や食料の在庫状況の確認
飲料水や食料を充分に確保しているか確認しましょう。また賞味期限が近くなっていたり、従業員数に変動があれば、備蓄品の入替を行います。
「ローリングストック法」により、賞味期限や使用期限が古いものから定期的に消費し、新たに買い足して備蓄分を補充すれば、食品ロスにならずにすみます。
従業員やその家族の安否の確認方法
緊急連絡先を事前に共有するなど、迅速な安否確認ができるようにすることで、従業員や家族の不安を軽減します。安否確認手段の確認もしておきましょう。
※愛知県HP「災害時は一斉帰宅の抑制をお願いします」より
避難場所や避難経路の確認
事前に避難場所や避難経路を確認しておけば、混乱を避けて安全に非難することができます。
また、防災備蓄品を持ち出せるようにしておけば、避難先で安心して過ごすことができます。
防災備蓄品と目安となる数量
内閣府のガイドラインでは、必要な備蓄量は3日が目安となっています。愛知県の条例によると、具体的な備蓄品とその数量は次のとおりです。
備蓄品の例
- 水:飲料水
- 食料:クラッカー、アルファ化米、乾パン、カップ麺
- その他:毛布、保温シート、簡易トイレ、敷物、携帯ラジオ、懐中電灯、乾電池、救急医療薬品類
備蓄量の一人当たりの目安
- 水:1日3ℓ、計9ℓ
- 食料:1日3食
- その他:毛布・保温シート1人1枚
※愛知県HP「災害時は一斉帰宅の抑制をお願いします」より
上記に加え、事業継続の要素を含めた備えを検討する必要があります。
災害時備蓄状況調査結果
今年4月に内閣府から発表された備蓄用品の調査結果によると、飲料水の備蓄ありは1、2日分と3日分以上をあわせると78.7%でした。食料品は74.3%、簡易/携帯用トイレは58.2%、毛布は備蓄ありが48.9%となっています。
※内閣府HP「企業の事業継続及び取組に関する実態調査結果(令和6年3月)」より
まとめ
各自治体では、企業の防災備蓄について、条例などにより呼びかけを行っています。いずれもペナルティはなく、努力義務としていますが、リスクマネジメントの観点からは用意をしておくに越したことはありません。
普段から定期的な点検を行い、可能な限りの対策をしておきましょう。